そもそも論として、マンションが購入者に引き渡された時点で、法的には「管理組合」が存在していることになっています。
その管理組合が業務を開始するまでの間は、管理会社が管理組合の業務を代行することになりますが、マンションの維持管理に対する居住者の意識が低い場合などは、管理組合の設立自体が大きく遅れることがあります。
築年数の経過した中古マンションなどにおいて、ひどい場合には、管理組合が設立されないままに管理会社や理事長の独断的運営を長期間に渡って許しているケースは、現実には決して珍しくありません。
弱い管理組合、議決があっても安心できないケースも
また仮に管理組合があったとしても、住民への情報提供機能や意思疎通機能が弱いために、トラブルとなるケースも現実には多くあります。
一例として、管理組合の総会で議決を経た後に修繕工事に入ったにもかかわらず、その後大規模修繕工事の費用が高すぎるという事実に驚いた一部住民が、工事着工後に反対に回り、最終的に工事そのものが中断に追い込まれた...といったケースがあります。
(マンション購入、「修繕積立金の積み立て不足」問題にはこう対処。ご参照)
現在、国土交通省の推計によれば、分譲マンションの戸数はおよそ500万戸、うち築30年以上が経過したいわゆる「老朽化(高齢)マンション」は、その10%以上ともなる56万戸に上ります。
こうした築年数が数十年に及ぶマンションは、建物だけでなく、住んでいる住民自体の年齢も高齢化してきていることから、自分たちが余生を過ごすための現状さえ保たれればそれでよい、という考えの人も多く、彼らは高額の費用が必要となる修繕行為そのものを望まないのです。
中古マンション購入を考える場合、このような考え方をする方が、一定数はすでに必ず居住しているものと、はじめから考えておいたほうがよいでしょう。
長い年月で入れ替わる入居者がもたらすリスク
新築マンションとして分譲を開始した段階では、購入にあたり一定の年収証明などが必要なこともあり、目に見える問題は起きにくいのですが、マンションの築年数が経過するにつれて、収入に余裕のある層がもっとよい居住環境を求めて転出したり、また逆に相場がさがったタイミングを見計らって収入の少ない層が転入してきたりするために、入居当初の顔ぶれも変わってきて、住民の入れ替わりが生じてくるものです。
そうなると、そのマンションに最初から住んでいる人と、途中で入ってきた人との間で、マンションの維持と管理に対する住民の思い入れがだんだんと異なってくることから、分譲当初はうまくいっていた管理組合の運営も住民の考え方がバラバラになるため、支障が生じてくる場合があります。
大規模修繕が難しくなってくることだけならまだしも、それ以外にも、経済力の低い人が増加することにより、マンションの管理費用や修繕積立金の滞納者の増加リスクも、高まってきます。