マンション販売業者は、新築マンション購入がやりやすいよう、修繕積立金を安く設定する傾向があります。
「長期修繕計画」を何年先まで立てるかによっても、程度の深刻さはかわってきますが、いつの日か大規模修繕の必要が現実的に検討されるときに、「修繕積立金の積み立て不足」問題のかたちをとって、居住者の前に現れることになります。
(中古マンションの「管理組合」「修繕積立金の滞納」は購入前に調べる。 ご参照)
通常の管理費については、あまり高く設定すると目立ちますし、第一そうすると真っ先に、金額引き下げの対象にされてしまいます。
加えて、最近は購入側もよく勉強していることから、とりわけ中古マンションでは、現状では全般的にはそう無茶な管理費の設定はなされていないようです。
また実際問題として、管理費で利益をあげている管理会社はあまり無いようです(しかし新築マンションの管理費は、いまだ最初から高い設定をしてくる会社もありますので、管理費の削減余地がないかどうかについては、やはり注意する必要があります)。
しかしながら「修繕積立金」については、いざ大規模修繕が現実的な視野に入ってくると、まるでころあいを見計らったからのように、管理会社から修繕積立金の大幅な値上げ提案が出され、突然の展開に住民が面食らう...といった事例も、現実にそこかしこで起きているのです。
入居時には、必ず「長期修繕計画」の存在をチェックする
マンション購入時には、販売業者から計画期間が20~30年の「長期修繕計画書」を提示されるはずですが、その中においては外壁塗装や給排水工事の時期やその見積費用なども、示されています。
このとき、長期修繕計画に従って、入居後何年目ごとにどれくらいの割合で、修繕積立金の改定を行う予定かを記した、「将来的な修繕積立て金額の推移」の箇所をよく確認し、数年後の金額改定による増加について、それなりの精神的な備えをしておかないと、いざ値上げ提案を実際につきつけられたときに、驚くことになります。
「修繕積立金」の将来的変動と、管理会社の利益確保
この将来的な修繕積立て金額の値上げ計画が妥当なものかどうかは所有者の総意、すなわち実際には管理組合がチェックしていくことになるわけですが、この値上げ計画の前提は、あくまで入居時の状況に照らして、将来を予測したひとつの目安にすぎないことは、まず気をつけておく必要があります。
その後の物価水準の変動や、地震によるひび割れなど思わぬ修繕箇所の発生・増加なども、長い年月には、高い確率で起こりうることからして、入居後には一定の期間ごとに、管理組合としてその適正さを見直していく必要が生じます。
このときに注意したいのは、管理会社が提示する修繕計画の工事費そのものが、すでに高い水準で設定されている可能性もあることです。
通常、管理会社は清掃・設備保守・水道料金などの収納業務をトータルで請け負っているため、元請けとしてグループ会社や外部業者にさらに発注する段階で、途中で中抜きをして利益を確保します。
この中抜きをもっとも大きくやりやすいのがこの修繕費部分といわれており、なかでも大規模修繕時に、元請けとして工事発注することに、ウマミが多くあるといわれています。
管理会社まかせにせず、第三者となる専門家の意見や相見積りを活用
専門知識に乏しい管理組合の側は、管理会社の説明にどうしても引きずられやすいものです。
2001年に制定された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」により、管理会社側に収支状況の報告・管理組合の会計に関わる帳簿管理などの「事務管理業務」が定められたため、管理会社の業務に関わる収支チェックをすること自体は、現在ではさほど難しいことではありません。
しかし、「修繕費」に分類される各項目の金額の中に、管理会社が自社利益をどのように混ぜ込んでいるかまでは、専門知識に乏しい外部者からは、いまだなかなかわかりにくくなっています。
突然の修繕積立金の大幅な引き上げや、管理費の水準が近隣マンションに比べて突出して高い...と住民の多くが感じているような場合は、あるいは修繕費目が、「管理会社の利益捻出装置」となっているかもしれません。
最近、意識の高いマンションの管理組合の中には、外部の設計事務所などの専門知識を有する第三者に相見積もりを依頼し、費用節減のための意思決定や管理会社との金額交渉に利用しているところも出てきています。
完全に管理会社まかせにしてその説明を鵜呑みにせず、また修繕積立金の内訳や修繕積立て計画について合理的な説明ができない管理会社に対しては、管理組合としてその内容をチェックし、場合によっては第三者を上手に利用していくことも考えに入れておかないと、いつの日か大きな追加負担の出現に、悩まされることになるかもしれません。