デフレ基調の経済環境下、景気回復のきざしもなかなか見られないままに、企業業績の悪化が進んでいます。
サラリーマンにとっては、安定的な雇用と長期的な給与上昇を見込んだ住宅ローン計画をたてることが難しい不透明な時代がしばらく続きそうです。
マンション市況が低迷する現在、「いまこそ新築・中古マンションの買い時」とばかりに物件探しに余念のない方もいるでしょうが、「このような環境下で住宅ローンを組むことのリスク」を、よく踏まえて対応することが大事です。
また、現在住宅ローンを利用中の方も、今後の状況変化に備え、いまできることはなるべく前倒しで処理する姿勢を持つようにしたいものです。
資金計画は、最初からネガティブな状況を想定して立てる
まずは、現在の状況がこの先何十年も安定して変わらない、所与のものとばかりに楽観視する姿勢を最初から捨てて、ネガティブな条件をさまざまに設定しながら、資金計画や返済計画をあれこれシミュレートしてみることです。
万一の勤務先の倒産、あるいは自らが減給やリストラにあったときのことなどを想定しつつ、できるだけ保守的な支払計画にもとづいて、住宅ローンを組むことです。
不動産競売流通協会の集計によると2009年4~9月の半年間で、全国の競売にかけられた一戸建ての数は前年同期比57.3%、同じくマンションにいたっては22.3%も増加したとのことです。
購入時の資金計画が中途で行き詰まり、金融機関から競売を申し立てられるに至ったケースが、全国的に急ピッチで増えつつある実情が読みとれます。
最初の3~10年くらいを固定金利で据え置いてその後は変動金利に移行する、いわゆる「固定金利特約型」の住宅ローンを利用している方も、いまや相当数に達しています。
しかし、すでにこれ以上下がりようがないほどの低金利が続いている現在、中長期的にみての金利上昇はもはや必至と言えます。
むろん、市場の金利上昇がストレートに返済額アップに跳ね返るとは限りませんが、給料やボーナスの増加が見込めないなかで、月々の返済額が購入時から大きくアップする危険性は、住宅ローン借り入れの瞬間から常について回ることになります。
住宅ローンの借り換えは、まず今の借入先の金融機関に相談する
すでに借り入れている方にとっては、(1)可能なタイミングをとらえてこまめに増額返済を行っていく(2)今よりも支払条件の有利な住宅ローンに借り換える、などが、とり得る対策として考えられます。
(1)の手段によって返済期間を短くしたり、将来の金利上昇リスクをある程軽減することができるわけです。
ただし(2)の借り換えについては必ず、現在の借り入れ先である金融機関に真っ先に相談するようにしましょう。
いまの借入先と交渉することで支払条件の変更に応じてもらえる可能性も(特に今の時期は)十分にあるでしょうし、また当てにしていた借り換え先の審査に落ちるリスクもあるためです。
加えて、借り換え時には一般に、抵当権の設定・抹消にかかる事務手数料や、登録免許税・保証料などの諸費用が数十万円程度発生します。
苦労して金利の低い銀行へと借り換えをしたにもかかわらず、後で計算してみたら、当初思っていたほどには月々の返済額が軽減されていなかった…といった事例もあります。
このようにトータルでみた場合、借り換えが必ずしもベストではないケースもあり得ることから、実行前には慎重な比較および検討が必要です。
2009年12月から、「中小企業金融円滑化法(いわゆる返済猶予法)」が施行されています。
同法は中小企業のみならず、住宅ローンを抱えている個人も対象で、返済の負担軽減の相談を受けた場合、返済条件の見直しにできる限り応じるよう金融機関に求めることを内容とするものです。
しかしこれは努力義務であるため、金融機関としては返済期間の延長、ないしは月々の返済額見直しに応じられる場合にのみ、相談に応じているというのが実情です。
借入れ先の金融機関としても、住宅ローンの確実な回収をはかる観点から、住宅ローン返済の相談窓口を設置するなどして、それなりの対応策をとっています。したがって債務不履行に陥る前に、早めに相談することが必要です。
住宅ローンの返済期間を延長することの意味を考える
ただし金融機関が交渉に応じてくれて、その結果返済期間が延長されたとしても、金利そのものが変わらない以上、トータルの支払額は最終的には増えていくことをよく念頭に置いておく必要があります。
あくまで当面の資金繰りを一時的に楽にするための応急措置にすぎないことを、強く意識しておくことが大事です。
また、これから新規に住宅ローンを組む予定の方は、上で述べたとおりいくつかのネガティブな状況をシミュレーションしたうえで計画を組み、増額返済ができるチャンスが到来した場合は、必ず返済していくようにしたいものです。
途中で借り替えや返済条件の変更をできるだけしなくて済むよう、あらかじめ保守的な返済計画を設計するということです。
住宅ローンといっても種類も多いし、身内で調べるにしてもちょっと手に余る・・・というならば、住宅ローンの専門家である「住宅ローン診断士」に相談し、場合によっては支払いプランまで組んでもらうというのも一法です。
・日本住宅ローン診断士協会
最初に多少の相談料を支払うことになっても、金融機関から独立した立場で活動する彼ら住宅ローン専門家のアドバイスを聞くことにより、それ相応の費用対効果を期待できるはずです。