新築マンションの分譲広告などを見てお気づきのとおり、最近は「ペット飼育OK」を売り文句にしているマンション販売が増えてきています。
しかし、広告の文言のみをうのみにして、よく調べもせずマンションを購入し、ペットを引き連れて入居した後に他の居住者とトラブルになる事例は、全国的にみても少なくありません。
ペット飼育OKの新築マンションが、増加傾向
平成15年度の国土交通省によるマンション総合調査(データは古いですが、なにせ5年に一度の調査実施ですので、仕方ありません)によれば、マンションの居住者間トラブル・不満として、「違法駐車・違法駐輪」「生活上の騒音」の次に多いのが、「ペット飼育」の問題となっています。
また、管理組合の6割近くがペット飼育を禁止しているのに対し、逆に規制を設けていない管理組合は、わずか1割程度に過ぎない、という結果になっています。
しかしながら現在、新築マンションを中心にペット飼育を可とするマンションの数は、徐々に増えてきているようです。
ペットを大切な家族の一員と考え、高額なペットフードや飼育器具、保険や治療、はてはエステやペット葬儀にいたるまで、ペットに大金を投じて溺愛する方も決して珍しくなくなってきていることから、不動産会社としても商売上、新築マンションの管理規約に簡単に「ペット飼育禁止」の一文を盛り込むことを躊躇するようになってきているわけです。
ペット飼育は、「管理規約」の入居前チェックが必須
仮に、マンションの購入をお考えになっているあなたが、現在犬や猫などのペットと同居している場合は、管理規約にある「ペット飼育に関する条項」の箇所を、購入前に必ず確認しておく必要があります。
ペット飼育に関して、規約の方向としては大きく二つとなっています。
一つは、完全に「ペット飼育禁止」として、規約内にその旨を明示している場合。
ただしこの場合においても、いわゆる盲導犬・介助犬のような「身体障害者補助犬」は、その禁止の限りではないと解釈されています。
これは、平成14年10月に施行された「身体障害者補助犬法」にもとづき、補助犬はペット扱いではなく、身体障害者の体の一部として考えられることとなったためです。
二つ目として、ペットの飼育をなんらかのかたちで容認している場合。
この場合は、管理規約の使用細則において、飼育できるペットの頭数や大きさを制限している場合がありますので、それを遵守した上でペットを飼わなければなりません。
マンションの販売広告において、「ペット飼育可」と大きく謳っていながらも、その細かな内容について明示していない会社もあるようですので、管理規約中の使用細則について、購入検討段階でよくチェックしておく必要があります。
ちなみに過去のトラブル例としては、ペット飼育禁止のマンションにおいて規約に反しながらペットを飼い続けていた事例、また管理組合の規約が「ペットの飼育は一代限りで認める」となっていたにもかかわらずそれに反した事例、「他の居住者に迷惑を及ぼすおそれのある動物の飼育を禁止する」といった表現で管理規約に規定されていたことから生じた紛争事例、などがありました。
このうち最初の「ペット飼育禁止のマンションで規約に反した」ケースについては、平成2年の大阪地裁判例において、「マンションの区分所有者の共同の利益に反する」として、ペットの飼育側が敗訴しています。
また、一代に限って飼育を認めるとした規約のケースについては、これも裁判となりましたが、協同生活の秩序維持を図る観点が重視され、最初のペットが死亡した後に新たに二代目ペットの飼育を始めた居住者側が、敗訴しています。
最後の、「他の居住者に迷惑を及ぼすおそれのある動物の飼育を禁止する」という管理規約においては、この文章を読む限りでは、飼育OKとも飼育不可ともとれるため、もし裁判沙汰となった場合においても、個々のケースに照らして判断されていくことになるでしょう。
したがって、ペットを飼っている入居希望者の側としては、管理規程にこのように書かれていた場合に、もっとも頭を悩ますことになります。
管理規約内「ペット飼育」の箇所は、後での変更は困難
以上の状況から、後の無用のトラブルを避けるためにも、管理規約でペット飼育に対しての対応を明確に定めていないマンションについては、最初から警戒してかかるべきでしょう。
このようなマンションでは、自分だけでなく、ペットを飼っているマンションの居住者全員が、マナーを守って他の居住者に迷惑がかからないように足並みを揃えて行動しない限り、トラブルの芽が常に温存されていることになるわけです。
「ペット飼育に関する管理組合規定を変更して対応する」という考え方もありますが、所有者および議決権の4分の3以上を集めるためには大変な時間と労力がかかり、そうそう簡単に実現できるものでもありません。
言うまでもないことですが、生理的に、犬や猫などの動物をどうしても受けつけない...という居住者が、生活環境が乱されるとして強く反対するということは、十分にありうることだからです。
結論として、あなたにとって、今のペットがかけがえのない人生のパートナーであるという認識がおありならば、はじめから管理規約でペット飼育を明快な規程で容認しているマンションを選ぶようにすることが、後のトラブルを避けるためには最善、ということになりそうです。